« 日本財団「学術手話通訳に対応した通訳者の養成」事業シンポジウム | トップページ | アクセシビリティが届いている人の無自覚さ »

2022年11月15日 (火)

ドラマsilentから…「聾者の役は聾者がやるべき」か?

【ややネタバレ注意】

なんと,5年ぶりの投稿です。

(投稿の仕方も,忘れてしまっていました…)

 

ドラマsilentが,はやっています。私も見逃し配信で追いつき,今は次が楽しみで毎週見ています。

とにかくよくできていると思います。セリフに構成に。

特に第6話は,必見!

これは,聴覚障害に関わる人,特に,聴覚障害学生支援や,聴覚障害ソーシャルワーカーは絶対見ないと。

「聞くね」という奈々のセリフは,本当に,名セリフ。思わずホロリ。

奈々のこの感性ですが,もちろん聾者で感受性が高くて,サポーティブな人もたくさんいますから,自然にあり得ると言えばあり得るのですが…私の経験的な感覚では,この行動って,自分も手話が分からない中で孤独を経験したことがある,インクルーシブ経験者のレイトサイナーが,手を差し伸べる感じなんですよね。

 

さてさて。

「聾者の役は聾者がやるべき」といわれます。その観点で,silentは聾者の役者も入っているのが評価されたり,でも主役級の想と奈々が聴者なのが残念,ともいわれます。

ですが。

想は,中途失聴者でレイトサイナー。ネイティブっぽかったら,むしろ変です。

「中途失聴者がやるべきだ」なら,わかりますが,聾者がやる方が難しいと思います。

そして奈々は?

聴者が演じるので,「ネイティブサイナーっぽくない」という指摘はあるのですが,では,例えば先天性聾者で,聴覚主導の聾学校幼稚部を卒園し,通常学校を経て,大学で聾学生との出会いから手話の世界に入っていったレイトサイナーというケースだったら?こういう人,とっても多いです。今や,大学は聴覚障害者が初めて手話と出会い,手話の世界に入っていく貴重な場になっています。

仮の設定ではありますが,そうだとしたら?

ネイティブっぽいくらい手話が熟達する人もいますが,そうではない人もたくさん。

なので,「ネイティブっぽくない」のは不自然ではない,ということになります。

そして,そう考えると,だからこそ,奈々の友人の聾者である美央が,初心者向けにわかりやすく手話をしているのに,それが想には痛い!という状況に深みが出てくる。つまり,美央こそがネイティブサイナーである意味が出てくる。

それと,手話教室。

聴者の先生と聾者の先生がいる。聴者の春尾先生,謎めいてますね。聾者との係わりで,何かあったのでしょう。たぶん。

そして,聾者の澤口先生に,君には壁を感じると言われる。この聾者も,ネイティブサイナーでないといけない。

手話教室の聾者の先生ですし,「壁を感じる」のセリフはネイティブの聾者だからこそ,活きる。

 

そう考えると,どうでしょう?

silentは,見事に,ネイティブサイナーでなければならない役どころを,ちゃんと抑えているといえるのではないでしょうか。

« 日本財団「学術手話通訳に対応した通訳者の養成」事業シンポジウム | トップページ | アクセシビリティが届いている人の無自覚さ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

聴覚障害学生支援」カテゴリの記事

書籍・映画・音楽」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。