聴覚障害学生支援実践事例コンテスト,準優勝!
12月19日(土),毎年恒例の日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)のシンポジウムでの実践事例コンテストですが,本学も昨年度に続き準優勝でした。
私は叱咤激励し、ダメ出し連発しただけで学生が頑張りました。
毎年、このコンテストがあるおかげで、「全国発信できる新たな課題は何か?」を学生たちが真剣に考え、自分たちのこれまでを振り返り、新たな課題を発見できます。
本当に、聴覚障害学生と支援学生が、このコンテストを通じて、大きく成長します。
振り返ると、いつも難しいテーマに挑んでいました。
思うに、群馬大学という大学は、今や、「自校の取り組み」を発表するだけでは、誰も褒めてはくれない大学なのだと思うのです。
昨年は、障害学生同士の助け合い(聴覚障害学生のテイクを肢体不自由学生がする、とか)。これは準優勝
一昨年は、「教育実習」。これは2度目の優勝!
そして今年は、「支援体制が整うことからくる矛盾」
…なんと挑戦的なテーマでしょう!
いわば、支援の「光と闇」の「闇」に挑んだわけです。
学生たちは、苦しかったことでしょう。
よく、このテーマを見いだし、そして発表してくれたと思います。
支援の必要な全ての授業にテイカーがつくこと。それは権利として必要なことです。
でも、それゆえに、友達が作りにくい状況が生まれる。
友達が手話を覚えてくれて、手話通訳をしてくれる。
それは嬉しいことだけれども、手話が苦手な人とも、直接話がしたい。
自分と話がしたい!と思ってくれる気持ちを大事にしたい。
…そんな時、サッと手話通訳をしてくれる友達が、疎ましく思えてしまったりする。
「みんなでわかるように頑張るから!」と言われ、飲み会に参加してみたものの、気を使ってくれたのは、最初の10分。話が盛り上がれば盛り上がるほど、放っておかれ、孤独になる…
「みんなが手話を覚えてくれて、『クラスに手話の輪が広がった!』」なんて感動話は、そこここにある。でも、現実はそんなに単純なものではないわけです。
何度お願いしても、裏切られる。それも、悪意はなく、仕方なく。ついうっかり。
いわば、「善意の抑圧」がそこにあるわけです。
そのうちに、お願いするのも疲れてしまい、愛想笑いを浮かべてその場をやり過ごす「スキル」(?)を身につける。
…しかしそれは、スキルと呼ぶにはとても悲しすぎます。
それでも、それでもやっぱり、聴覚障害学生が誇りある自分でい続けるためには、「嫌なこと」を言い続けなければならないのだと思います。
そして、お互いに不満をぶつけ合って、喧嘩したり、それも、泣きながら喧嘩したりしながら、そしてまた失敗したり、悪意のない「裏切り」をされてショックを受けたり、逆に、してしまって反省したりを繰り返すことができた中に、聴こえる/聴こえない、を超えた、本当の親友ができるのだと思います。
こうした過程は双方にとても辛い産みの苦しみをもたらします。
でも、それを乗り越えて、「かけがえのない友情」を育んだ関係も、時々見ることができます。
そんな時、「この世界で教育に携わっていて良かった!」と思ったりします。
群大生の皆さん、素晴らしい発表を、ありがとう!
あとは、プレゼン力を、もうひと工夫ですな!(笑)
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コメント
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初めまして。
私は少し前まで、とある大学でノートテイクサークルの副部長でした。
私の所属する大学では、ノートテイカーの養成はうちのサークルがメインとなっております。
障害学生支援室は、年に1度講座を開いてくれるなどしかしてくれません。
年々学生ノートテイカーをどう指導するのかが、我がサークルの悩みです。
学生は意外と忙しいもので、特に私の所属する大学はアルバイトをする学生がほとんどです。
現在は全要研系の一部の方に指導の協力をお願いしておりますが、大学側が納得してくれません。
群馬大学は数年前にペップネットのシンポジウムにて、お邪魔したことがありますが、どのようにして、現在のような支援体制になったのですか?
主に大人の事情の方を教えて頂きたく思います。
全要研の方には受講テイクはやめてほしいとも言われていますが、学生側からは中々断りづらいところがあります。
そういうことは群馬大学ではないのですか?
投稿: | 2016年4月 3日 (日) 16時49分
コメントをありがとうございました。
まずはご質問にお答えします。
これまでの体制構築には,ここでは説明できないくらいの経緯があります。
手前味噌で恐縮ですが,『手話の社会学−教育現場への手話導入における当事者性を巡って−』(生活書院)をお読みいただければG大学の体制構築について,詳述しています。
「受講テイク」とは,受講している学生がテイカーを兼ねる,という意味でしょうか?
それは群大では行っていません。「してはいけないこと」ということになっています。
その上で,意見を。
なかなか大学が理解を示してくれていない中での活動,大変ですね。
でも,今年の4月から,障害者差別解消法が施行されました。それに伴い,文部科学省は私立学校向けに,以下の対応指針を発表しています。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/20151109_setsumeikai/pdf/s4-2.pdf
私立大学の関係者の中には,「合理的配慮の提供は『努力義務』なのだから,『義務』ではない。だからできなくてもよいのだ」と主張する方もいます。
しかしながら,合理的配慮の提供ができない場合であっても,障害学生に対して十分な説明責任は生じますし,改善がなされない場合には「勧告」も受けます。つまり,これからは私立大学であっても,合理的配慮の提供に向けて「努力」する義務が生じているわけです。
この対応指針を熟読し,これを根拠に大学側と交渉してみてはいかがでしょうか。
投稿: KANAZAWA | 2016年4月 4日 (月) 18時47分