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2015年12月23日 (水)

前橋市手話言語条例,制定!

先日の2015年12月7日に,前橋市手話言語条例が成立しました。

施行は2016年4月1日です。
今年,群馬県手話言語条例が3月12日に成立したのに続き,群馬県内の市町村では初になります。
そして,県と市町村の両方で制定したのは,全国初でもあります。
手話言語条例は,この時点で,市町村では20件,都道府県では3件の,計23件になりました。
そして,2013年の鳥取県の全国初の手話言語条例および石狩市の市町村で全国初の条例の制定から2年が経ち,手話言語条例の条文にも変化が生じてきました。 各自治体が,先例を参考に,より良いものを作ろうとしてきたからです。
前橋市もその例に漏れず,現時点で考えられる,最も良い市町村条例ができたのではないかと思います。
ということで,ここで前橋市手話言語条例の特徴について,解説を!
前橋市手話言語条例は,制定プロセスに見られる特徴と,条文の内容に見られる特徴の両面において,今後のモデルとなる事例となったといえます。
 
すなわち,
制定プロセスの特徴は,以下の通り。
1.議長の呼びかけにより,市議会の全会派の代表者による研究会が組織化
2.議員による研究会の中,意見交換会が開かれ(計3回),当事者(前橋ろう協ら前橋3団体と,群聴障連,県通協,そして聾重複児をもつ親の会「とまとの会」)による修正意見が提示され,その意見がほぼ全面的に取り入れられ,修正された。
3.執行部(行政)側の全面的な協力が得られた(なれ合いではなく,厳しい議論を戦わせながらですが)。具体的には,研究会には障害福祉課長ら数名が常に参加し,さらに意見交換会には福祉部長,総務部長,教育委員会次長が参加(課長以下も同席)。
4.意見交換会には,有識者として,医師会会長,群大病院耳鼻科難聴児外来担当医師,そして聾教育の研究者(つまり私)も参加。特に医療関係者の参加が重要!
そして,内容面での特徴は,以下の通り。
1.中核市が県から権限委譲されている,教育委員会の研修権限と保健所の設置権限に注目
2.市立学校での教育として,対象を「児童,生徒」のみならず,「幼児,児童,生徒および学生」に拡張(これにより,幼稚園,小学校,中学校,市立高校および前橋工科大学が含まれることに)。
3.教育の内容として,手話の普及だけでなく,手話を必要とする聴覚障害児への支援を含めた。
4.医療機関での手話の普及等(郡山市が前例)を含めた(これにあたり,前橋医師会会長も意見交換会に参加)。
5.聴覚障害の診断(発見)を受けた本人及び家族に関わる専門家への啓発を含めた(これにあたり,群大病院耳鼻科難聴児外来担当医師も意見交換会に参加)。
6.災害時への支援(郡山市が前例)を含めた(これにあたり,総務部長および危機管理室長が意見交換会に参加)。
7.手話言語条例でありながら,その他の意思疎通支援手段として,要約筆記についても言及(郡山市が前例)
以上,このような点が画期的な特徴としてあげられます。
手前味噌ではありますが,このように見てみると,直近に制定された中核市の条例である郡山市の良い部分を取り入れながらも,さらに新しい内容を取り込むことで,市町村手話言語条例の中で,最も画期的なものができあがったということがお分かりいただけるかと思います。
きっと来年には,群馬県内でも,前橋市の条例制定が波及効果となり,他の市町村でも条例ができてくることと思います。そのような,これから後に続く条例には,さらに良いものができることを期待したいと思います。

聴覚障害学生支援実践事例コンテスト,準優勝!

12月19日(土),毎年恒例の日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)のシンポジウムでの実践事例コンテストですが,本学も昨年度に続き準優勝でした。

私は叱咤激励し、ダメ出し連発しただけで学生が頑張りました。
毎年、このコンテストがあるおかげで、「全国発信できる新たな課題は何か?」を学生たちが真剣に考え、自分たちのこれまでを振り返り、新たな課題を発見できます。
本当に、聴覚障害学生と支援学生が、このコンテストを通じて、大きく成長します。
振り返ると、いつも難しいテーマに挑んでいました。
思うに、群馬大学という大学は、今や、「自校の取り組み」を発表するだけでは、誰も褒めてはくれない大学なのだと思うのです。
昨年は、障害学生同士の助け合い(聴覚障害学生のテイクを肢体不自由学生がする、とか)。これは準優勝
一昨年は、「教育実習」。これは2度目の優勝!
そして今年は、「支援体制が整うことからくる矛盾」
…なんと挑戦的なテーマでしょう!
いわば、支援の「光と闇」の「闇」に挑んだわけです。
学生たちは、苦しかったことでしょう。
よく、このテーマを見いだし、そして発表してくれたと思います。
支援の必要な全ての授業にテイカーがつくこと。それは権利として必要なことです。
でも、それゆえに、友達が作りにくい状況が生まれる。
友達が手話を覚えてくれて、手話通訳をしてくれる。
それは嬉しいことだけれども、手話が苦手な人とも、直接話がしたい。
自分と話がしたい!と思ってくれる気持ちを大事にしたい。
…そんな時、サッと手話通訳をしてくれる友達が、疎ましく思えてしまったりする。
「みんなでわかるように頑張るから!」と言われ、飲み会に参加してみたものの、気を使ってくれたのは、最初の10分。話が盛り上がれば盛り上がるほど、放っておかれ、孤独になる…
「みんなが手話を覚えてくれて、『クラスに手話の輪が広がった!』」なんて感動話は、そこここにある。でも、現実はそんなに単純なものではないわけです。
何度お願いしても、裏切られる。それも、悪意はなく、仕方なく。ついうっかり。
いわば、「善意の抑圧」がそこにあるわけです。
そのうちに、お願いするのも疲れてしまい、愛想笑いを浮かべてその場をやり過ごす「スキル」(?)を身につける。
…しかしそれは、スキルと呼ぶにはとても悲しすぎます。
それでも、それでもやっぱり、聴覚障害学生が誇りある自分でい続けるためには、「嫌なこと」を言い続けなければならないのだと思います。
そして、お互いに不満をぶつけ合って、喧嘩したり、それも、泣きながら喧嘩したりしながら、そしてまた失敗したり、悪意のない「裏切り」をされてショックを受けたり、逆に、してしまって反省したりを繰り返すことができた中に、聴こえる/聴こえない、を超えた、本当の親友ができるのだと思います。
こうした過程は双方にとても辛い産みの苦しみをもたらします。
でも、それを乗り越えて、「かけがえのない友情」を育んだ関係も、時々見ることができます。
そんな時、「この世界で教育に携わっていて良かった!」と思ったりします。
群大生の皆さん、素晴らしい発表を、ありがとう!
あとは、プレゼン力を、もうひと工夫ですな!(笑)

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