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2015年3月17日 (火)

群馬県手話言語条例,制定!

3月12日,県議会で群馬県手話言語条例が全会一致で成立しました。

メディアでは,「全国で,県条例としては3県目」といった報じられ方などがされていますが, そこはまったく大事ではありません。

この条例の最大のポイントは,「全国で初めて,当事者団体と議員とが時間をかけて条文を練り上げて作り上げた手話言語条例」ということになるかと思います。

もちろんそれぞれの他の地方自治体の条例制定においても,当事者団体の関与はあったわけですが,条文を練り上げる作業そのもの、さらにはそれだけでなく、勉強会、視察、研究会も、当事者団体と議員の方々とが一緒になって進められました。 これこそが、群馬県手話言語条例の大きな特徴と言えるのではないかと思います。

また,一口に当事者団体と言っても,自民党内に作られた研究会メンバーには、全日本ろうあ連盟,群馬県聴覚障害者連盟,群馬県認定手話通訳者協会,群馬県手話サークル連絡会,群馬県手話通訳問題研究会と,実に幅広く関係当事者団体の責任者が集まりました(「有識者」として私も参加させていただきました)。

例えば,鳥取県手話言語条例の中で,「手話通訳者」という文言が多用されているのに対し,群馬県では「手話に関わる者」という文言が出てくるのは,さまざまな当事者団体が集まって話し合いがなされた結果,「手話通訳者でなくとも,手話を広めていく役割を担いうるのでは?」という考えに至った例と言えます。

条例に表れる当事者の熱い想いは、条例の前文を読んでいただければ伝わるだろうと思います。 また,当事者だけでなく,群馬県の聾教育,聾者の社会を,我々が変えていかなければ!という議員の方々の熱い思いもありました。議員の方々と,当事者団体が時間をかけ,条文を練り上げて作った条例という意味では,手話 の問題に限らず,全国的に見ても珍しいでしょうし,今後のモデルになりうるのではないかと思います。

もちろん,条例はそれぞれの地方自治体の置かれた環境にあわせて作られるものですから,他県の条例と比べてどっちが良い,悪いの世界ではありません。 ただ,群馬県手話言語条例を作っていくのにあたり,関係者で 鳥取県を視察しており,議会,行政,ろう協のそれぞれの関係者の方々から,貴重なお時間をいただきご示唆をいただいています。鳥取をモデルにしながらも,そこからさらに群馬県の実情に合わせつつブラッシュアップしていますし,なにしろ鳥取県への恩返しの意味でも,より良いものにしていかなければと思って議論を重ねました。

鳥取県手話言語条例は,全国初であるにも関わらず、今見ても,実によく錬られていると感じています。視察の際に担当課長が仰っていたのは、「(手話言語法(仮称)制定事業において提案された)『手話の5つの権利』を条例に落としていった」とのこと。 …なるほど、納得でした。

群馬県においても,手話言語条例を練り上げていく際,やはり5つの権利の具体化を意識しました。特にブラッシュアップしたのは,5つの権利の中でも,第1の権利である,「手話を獲得する権利」を明確に示すことです。それが,12条です。 この12条を練っていく背景には,研究会の初回にさまざまな方々にヒアリングを行い,具体的にどのような問題が聾教育において実際に生じているのかについて,共通理解を図りました。

群馬県手話言語条例が制定されて改めて思うのは,やはり手話言語条例を策定していく以上,そもそも「手話」とは何なのか?について,きちんと共通理解を図っていく作業が不可欠だということです。 手話は聾教育の長い歴史の中で,「でたらめ」「動物的(猿真似)」「思考力が身につかない」など,言われなき偏見,蔑視の中で,禁止されてきました。いわば,日本の中で弾圧されてきた言語だったわけです。その歴史認識を共有し,その反省の上に立つこと。いわば聾者の復権。 そして,手話を獲得する権利を保障していくことで,これから先,手話が必要であるにも関わらず獲得する機会を奪われてしまうというケースをなくしていこうとする。

つまり,年配の聾者にとって心の傷となっている過去を清算し,聴覚障害児を育てている保護者の方々の未来に繋げていく。

これこそが,例えば字幕の充実を求める要望などとは決定的に異なるわけです。なぜ,「手話だけの条例が必要なのか?」という問への答でもあります。

このような共通理解を図りながら進められた結果,群馬県手話言語条例は全国に誇れるものとなったのではないかと,関係者一同,自負しています。

もちろん,条例は制定されたら終わり,ではなく,むしろこれからが大事だと思います。行政がきちんと動いているかどうかをチェックしていくことも,条例制定に関わった関係者の責務だと思っております。

群馬県手話言語条例。ぜひ皆様,条文の中身を読んでください。 特に前文。群馬の聾者の想いが詰まっています。それと、12条も!

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