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2015年1月 9日 (金)

書評(ブックガイド)掲載!(「障害学研究」第10号,2014,pp251-253)

紹介が遅くなりましたが,昨年7月発行の「障害学研究」第10号(障害学会の学会誌)で,拙著『手話の社会学──教育現場への手話導入における当事者性をめぐって』(生活書院)を「ブックガイド」に取り上げて頂きました。

評者の高山亨太さんには,丁寧なコメントをいただき,心より感謝です!

いくつか,オッ!と思った(嬉しくなった)ところを紹介させていただきます。

・「聞こえる」立場である著者が,本書に愛情を注ぎ,社会に送り出すまでの,まるで親のような慈しみや苦悩を知らずにして,読破することは難しいかもしれない。

(…確かに!そしてその苦悩の軌跡の一部は,拙著の後書きをお読み頂ければと思っております。)

・まず,本書を読み進めるにあたって,近年の研究がデータに基づいた科学的根拠(エビデンス)を重視する実証主義の流れが主流の中で,なぜ著者がポストモダン主義である「構築主義」を援用したのか,また,「構築主義」とは何たるものかを理解しておく必要がある。

・まるで,ドキュメンタリー映画を見ているような感覚になり…(中略)多くの人に是非とも手にとって,フルコースで読んでほしい。

・ここ数年,情報保障支援の気運が高まっている高等教育におけるろう・難聴学生の支援の問題についても書かれており,多くの高等教育関係者にとって,良い意味での道標が記されている。

・著者は,本書とは別に,『聾教育の脱構築』という刺激的な書籍を2001年に世の中に送り出している。そこから干支を一周し,同じへび年の2013年に,本書『手話の社会学』が刊行され,今回も痛快な書籍を世の中に送り出してくれた。

・最後にないものねだりのお願いではあるが,結論に「聾者が望む聾教育の実現のためには,聾者にとって『この人なら信頼に足る』という人を見つける(p.335)」こととあるが,著者には,是非とも次のへび年まで待たずとも,信頼に足る人が増え,聾者が望む聾教育に一歩近づくための方法論に切り込むことを期待したい。

・今回も,「やっぱり金澤だ!」と声高に叫びたくなるような本書であり,多くの読者の期待を裏切らないだろう。

高山さん,過分なご紹介をいただき,ありがとうございました。m(_ _)m

2015年1月 5日 (月)

平成26年度の担当授業科目

担当授業科目ですが,平成19年度にアップして以来,ちっとも更新していないことに今気づきました。

今はこんな感じの授業です。


学部】

教養:手話とろう文化(聾者教員と共同授業,障害学生支援室として開設)

教養:障害者文化と共生社会(PCテイカー養成を含む)

障害児教育基礎

障害児教育制度

聴覚障害教育総論

聴覚障害の教育課程・指導法

聴覚障害教育演習

特別支援教育概説(共同授業,教育学部2年生必修)

専攻科】

聴覚障害児教育概論

聴覚障害指導法概論(コミュニケーション理論)

障害福祉学特講

障害児教育制度概論

障害者支援概論

コミュニケーション支援特講

聾重複障害児の教育概論

聾重複障害児の教育特講

大学院】

障害福祉学特論

障害福祉学特論演習

コミュニケーション支援特論

引用文献は「読みたい論文」を!

近年,論文検索システムが充実してきたことに加え,フリーダウンロードできる学術論文が増えてきました。

私が大学生,大学院生だった頃,図書館に籠もり,1つ1つ手作業で先行研究を調べ,そして1つ1つコピーをしていたのが,嘘のようです。

もちろん,これ自体は喜ばしいこと。

私自身,今はこの恩恵にあずかっています。

ただその一方で,問題がないわけでもありません。

フリーダウンロードできる論文の多くが大学紀要であるということです。

会費によって運営される学会誌の場合,無料配布というわけにはいかないという事情もあるのでしょう。

そうなると,困った逆転現象が起きます。

厳しい査読を経た学会誌の方が,いちいち複写依頼をしたり,あるいは現物を取り寄せたりしなければならないので,面倒になります。

一方,手っ取り早く読める紀要論文は,査読がありません。

すると,学生たちは,卒論,修論に取り組むのにあたり,自分の関連するテーマの論文検索をかけ,ヒットしたもののうち,手っ取り早く読めるフリーダウンロードできる論文だけを集めて,引用文献を整えてしまいます。

本来,先行研究というのは,手に入りやすいかどうかで取捨選択すべきものではないはず。

自分の研究に密接に関連するならば,たとえ入手困難でも,そして日本語でなくとも,意地でも手に入れなければなりません。

なぜなら,論文というのは,オリジナリティが求められるから。

自分の研究がオリジナルであることを主張するためにも,先人たちの血と汗と涙の結晶である「先行研究」に敬意を表し,その成果を踏まえて,一歩先に進ませてもらうことが大事になります。

すなわち,「入手の容易さ」ではなく,「読みたい論文」を手に入れなければならないはず。

ところが,あまりに容易に,そしてそこそこの数のフリーダウンロードできる論文が増えてしまったために,「読みたい論文」よりも,「読める(手に入る)論文」を収集して済ませてしまうという逆転現象が生じてしまう。

それはとても残念なことです。

執筆した側からしても,苦労して査読をくぐり抜けた「渾身の一作」よりも,「やっつけ仕事」的な論文が多く読まれてしまう。これは研究者として残念。

また,学生がそのようなクセを身につけてしまうと,良質の論文に触れ,論文の質を見極めるトレーニングを積む機会が失われてしまう。これは研究者養成として残念。

そんなこともあり,ここ数年,学生の卒論指導や院生の授業では,あえて「フリーダウンロードできる紀要論文ではなく,査読のある学会誌を選び,発表して下さい」と条件をつけています。

もちろん,紀要論文でも秀作はありますし,学会誌が良いものとは限らないんですけどね。

2015年1月 4日 (日)

2014年を振り返る

2013年は,人生の節目でした。

20年かけてまとめた(寝かせた?)博士論文が受理され,博士号授与。
10年ほど実践・研究を進めてきた聴覚障害学生支援については,PEPNet-Japanシンポジウムを群大で開催,そして実践事例コンテストでは群大学生がPEPNet-Japan賞(優勝)受賞。
今まで自分がやってきたことが,形になった一年でした。
そんなことで,2014年はもう少し落ち着いた一年かなと思っていました。
しかしありがたいことに,充実した一年になりました。
そして,それなりに新たな一歩を踏み出せた気がします。
著書(分担執筆)や論文の執筆も,例年並みかそれ以上にできました。
つくばで開催されたPEPNet-Japanシンポジウムは,記念すべき10周年記念イベント。パーティーの余興のクイズでは,栄えある(?)PEPNet-Japanマニアの認定をいただきました。(笑) そして実践事例コンテストでは,群大学生は優勝こそ逃したものの,準PEPNet-Japan賞(準優勝)を受賞。
そしてなにより私自身にとって大きな転機となったのは,群馬県での手話言語条例制定に向けての動きに関わることができたことです。
群馬県には,本気で真面目に取り組んでおられる議員の方々がおられるということを肌で知りました。
障害者福祉のこと,手話のことを自分の問題として受け止めて動いて下さる議員の方々と語り合える機会が持てたことは,自分にとって大きな意味があったと思います。
政治のシステムを,かつてないくらい細かく学びました。そして,「政治的な決着」ということの意味を学びました。
「理想と現実」というと,崇高な理想があり,それがグレードダウンしたところに現実があるかのように思えます。
しかしそれは正しくない。
ある人にとっての「理想」は,別の人にとっては迷惑だったりもするわけです。
さまざまな人の理想を調整しながら,皆が100%の「満足」ではなく,「納得」できる場所を探さなきゃならない。
それが,実際に計画していく「現実」なのだと思うのです。
手話言語条例の制定過程に携わる中で,政治というものを肌で感じることができたこと。これが2014年の最大の収穫だったと思います。
さて,2015年はどんな1年になるでしょうか。
まずは,無事に今年度内に群馬県手話言語条例が制定されることを祈りつつ,その先に高崎,前橋等に広がっていくことを願いつつ。
そして,自分にできることを一歩一歩形にしていきたいと思います。
今年も一年,皆様,どうぞよろしくお願いいたします。
 
追記:新年早々,手話言語条例に関する論考が,日本手話学会の学会誌『手話学研究』に掲載されました(金澤貴之「手話関連条例が果たす役割に関する考察-上程プロセスへの当事者関与のあり方-」手話学研究,第23巻,31-42頁)。幸先の良いスタートを切ることができました。

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