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2009年3月20日 (金)

傾奇(かぶき)者,前田慶次郎利益,そして,白州次郎

直江兼続ブームに合わせて,兼続本人に並んでもう1人注目されているのが,前田慶次郎利益(マンガでは前田慶次ですが,マンガの原作では前田慶次郎,本名は前田利益とのことですが,以下,前田慶次郎で)。
直江兼続ほどではないにせよ,やはり書店で並んでいます。

この前田慶次郎なる人物,北斗の拳の作者,原哲夫が「花の慶次 -雲のかなたに-」として少年ジャンプに連載するまではほとんど名前が知られていなかったような人だったのですが,この連載で一躍有名になりました。
最近は,パチンコでも爆発的なヒット作品になったとか。パチンコの花の慶次はパート2が3月にでたらしく,CMでやってますね。これも大河ドラマの影響なのかはよくわかりませんが。

で,ついつい気になって,直江兼続の関連本を読んでいたのが,同時並行で関心は前田慶次郎にも…

きっかけは,直江兼続のマンガ「義風堂々 直江兼続 -前田慶次 月語り」の一巻が出ていたので,思わず買ってみたこと。
タイトルでもわかるように,そのマンガが,もう隠居した「前田慶次」の回想で始まるわけです。
隠居した「前田慶次」ところに,夜,直江兼続がやってきて,いつものように酒を飲み交わす。そんなところから,このマンガは始まっていく…
原哲夫氏が「花の慶次」で書ききれなかった人物,それが直江兼続だそうで。

そんなわけで,「花の慶次」の廉価版(コンビニとかにある安くて分厚いやつです)を大人買いして,一気に読んでしまいました。
そしてその勢いは止まらず,さらにその原作の小説「一夢庵風流記」もイッキ読み。
小説を読んで,ちょっと意外でちょっと嬉しくなったことは,前田慶次郎のハチャメチャぶりはマンガで作られたのではなく,原作からそうだったということ。
「北斗の拳」とタメを張りそうな豪腕振りは,いかにもマンガだと思っていたのですが,原作でもその無茶苦茶振りはそのままでした。
直江兼続との出会いのシーンで,3〜4人ぐらいの首を槍の一振りで刎ねてしまうところなんか,そのまんまの豪快さ。
その上で,朝鮮で一暴れするところが琉球に変わっていたりとか,サブキャラがちょっと違っていたりとかの工夫もあるので,両方楽しめました。
今読んでいるのは,それらとは別の,小説「天下無双の傾奇者 前田慶次」(近衛龍春著)。
こちらの方でもは,戦場での鬼人のようなパワーは健在ですが,無茶苦茶な超人ではなく,もう少し等身大の前田慶次郎っぽい感じです。
戦場での戦い方などは,もうちょっとリアルでした。
それにしても,かなり年輩の武将だったのには,ちょっと驚きでした(ホントのところは諸説あって,よくわからないらしいんですけどね…)。
まあ,本当の実在の人物がどのような人だったかは,実はほとんど何もわかっていなくて,残っているエピソード自体,ほとんどが江戸時代に作られたものらしいのですが。

さて,「花の慶次」でも「一夢庵風流記」でも登場し,さらには「可観小説」(寛保三年=1715年作)」にも描かれているシーンで,私が最もしびれたシーンが,天下人,豊臣秀吉の接見。
詳細は読んでもらった方が楽しめるので省きますが,あり得ない格好で秀吉の前に登場し,そしてあろうことか,猿踊りを始めてしまいます。
そして秀吉と慶次郎にしかわからない,心理戦が繰り広げられ,最後は秀吉によって,「傾奇御免」(どこに行ってもかぶいて良い!という許可)をもらうに至ります。
読み手にとっても,手に汗握る瞬間ですね。
でも慶次郎,更にハラハラさせます。
秀吉から「大儀であった!(下がって良い)」と言われ,下がって,帰りがけに,褒美を取らすから戻ってこいと,再び秀吉に呼び止められるのですが,すぐに戻りません。1時間,太閤秀吉はじめ,諸大名を待たせてしまうのです。
そして1時間後に戻ってきた姿は,先ほどまでの無茶苦茶な服装とは打って変わって,ビシッと決めた正装。そしてその振る舞いたるや,武士の作法にキッチリ則ったもの。
これに,秀吉も参ってしまいます(思わず,「自分の家臣になれ」と言おうとしてしまいます)。

このシーンに,私も完全に参ってしまいました…が,何か見覚えがあるような気がして,記憶を探ってみて,「ああ,あれだ!」と思い出しました。
これまた最近TVドラマ化されて,本屋さんにコーナーができて賑わっている,白州次郎です。
彼は,「日本で最初にジーンズをはいた男」として知られています(ホントかどうかはともかく)。
サンフランシスコの講和会議のためにアメリカへ行く飛行機の中で,周囲の日本人は皆,スーツを着ている中,白州次郎は機内をジーパンにTシャツで過ごしていました。
この写真は有名で,ちょっとネットで検索すれば,バシバシヒットします。
49歳のこのオヤジ,やたら格好いい。まさに,元祖チョイ悪オヤジです。
そしてこの,我が道を行くってかんじが,ちょっとかぶいてます。
でもその一方で,タラップを降りる時には,バシッと英国仕立てのスーツに着替え,他の誰よりもスーツの似合う男として出て行ったそうです。

前田慶次郎も白州次郎も,「決める時に,ビシッと決められる男」なんですよね。
白州次郎,武勇伝には事欠かない人です。マッカーサーに喧嘩を売った話が特に有名で,占領下の日本にあって,アメリカ人に「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめた人ですし。
まあ,ケンブリッジ大学に9年も留学していた彼にしてみれば,「たかがアメリカ」なのでしょうね。
さらには,80歳のじーさんになっても,1600ccのエンジンを2400ccに積み替えたポルシェ911なるスポーツカーに乗っていたり。
うーん…やっぱり,傾奇者です。

でも,そんな白州次郎は,決して誰彼構わず喧嘩を売っていた訳ではないようです。
かれはPrinciple(原理原則)の人だったそうです。
筋の通らないことが許せなかったんでしょうね。
そこから振り返ると,マンガや小説の話ではありますが,前田慶次郎もまた,無茶苦茶なようでいて,Principleに基づいて生きているようにも読めます。

まっすぐに生きていく。それもとことん純粋に。
それが結果的に,周囲からすると「傾奇者」と言われてしまうのかもしれません。

そんな自分はどこかで世間の目を気にして,かぶききれないでいるんですけどね… (^_^;)

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