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2008年4月 7日 (月)

大事なのは、「色」…?

とある,学生支援に関する全学の委員会で,こんなやりとりがありました。

委員長:○○先生と事務方さんのご尽力もあり,ようやく本学の就職ガイドブックが完成しました!
 つきましてはですね,表紙の色をどうするか。
 この点について,ここにお集まりの委員の先生方に,ご意見を頂ければと思うのです。
 皆様,いかがでしょうか?
 業者の方で,3色の見本を用意してもらいました。

そして,黄色はちょっと派手かなとか,青が無難なんじゃないかとか,本学のシンボルカラーはなんだっけ,みたいなちょっとしたやり取りを経て,なんとなく,それとなく,みんなが納得しそうな理由があがって,「じゃ,全員一致で,緑色ということで!」みたいな感じでまとまります。
さて,この議論。
非常にわかりやすい議題なので,誰もが議論に参加できます。
でもそれ以上に重要なことは,「実はそんなに重要な問題ではない」ということも,誰もが感じています。(…たぶん)

…でも,なんで,「色」なんでしょう?
全学から選出された委員を集めて,決めるのが,「色」。

おそらく,誰もが感じる素朴な疑問があるはずです。
そう。
「もっと他に,決めなければいけない,重要な問題があるのでは?」…ですよね。

まあ,ここまでは,フィクションのような,ノンフィクションのような,でも,実は良くある話を茶化して書きました。
でも,決して委員長もふざけているわけではなくて,そうせざるを得ない事情があるわけです。
もっと言えば,その分,裏方での委員長と事務方の担当職員の相当のご苦労があるわけです。

大学の諸々のことを「決める」のは、委員会の仕事です。
特に,全学的な委員会は,各学部から選出された委員が集まり,全学に関わる「大きなこと」を決めたりします。
私も,いくつかの全学の委員を担当しています。
学生支援センター運営委員会,地域連携推進室,障害者雇用推進室協議会が,私が携わっている全学的な委員会の大きなものになるかと思います。
厳密には,「委員会」と「室」は異なるのですが,話が面倒なので,ここでは触れません。
それと,他にもいくつかの「ワーキンググループ」のメンバーになっていますし,それこそが実質的な議論の場であったりするのですが,ひとまずおいておきます。

各学部の委員会の場合,重要な委員会であれば,きちんと議論もしますし,時間もかけます。
でも,全学の委員会の場合,それぞれの学部から選出された人たちを集めますから,そんなに回数を多くするわけにもいきません。そしてそんなに長い時間,拘束するわけにもいきません。
そこに,矛盾が生じます。
全学の運営に関わる大事なことを決めなければならないのに,議論に時間をかけられない。
その矛盾を解消するために,1つの方法が生まれ,至る所で活用されています。
それは,原案をすでに用意しておくこと,です。
まあ,当たり前のことなんですけどね。
ではその原案は誰が作成するか。主に2つあります。
1つは,その委員会を担当する事務職員。
もう1つは,委員会のしたに作業部会とかワーキンググループを設けて,そのメンバーが作成する。この場合は,教員が作成することになります。

確かに,「お集まりの委員の先生方に,就職ガイドブックの作成をお願いします」と言った方が,大事な問題をお願いしたことにはなるでしょう。
でも,そんなことを引き受けてくれる暇な人はいません。
また,「お集まりの委員の先生方に,作成した就職ガイドブックについて,1頁目からお目通し頂き,これでよろしければご承認を頂きたい」というのも,無理があります。そんなに長い時間,会議に時間をかけられません。
そうはいっても,何にも決めることがなくて,「作りました」という報告事項にしてしまうには,「大事」な問題だったりもします。
そこで,そんなに本質的ではない議題(つまり,「色」)を用意して,短時間で「何かを決めた」形をとるということになります。

日本の「会議」はブレインストーミングの場ではありません。
すでに決まったことについて,承認を取っていくのが,日本流の「会議」なわけです(参考:橋本 治「上司は思いつきでものを言う」新英社,2004年)。
そしてそれが全学の委員会にも典型的に現れているということです。

このことは,障害学生支援についても,大事な示唆を与えてくれます。
近年,学長や副学長を委員長とする,「トップダウン」の委員会として障害学生支援委員会を設置している大学が増えてきました。
でも,実際の支援の質に目を向けてみると,ちょっとイマイチかも…と感じてしまう場合も珍しくありません。
それは結局,誰も本質的な問題がわからない中で,担当の事務方が出した案を承認していく結果なのかもしれません。
逆に言えば,障害学生支援の組織化を,短期間で良い形にしたいと思ったら,原案を作成する事務方と,(さらにできれば委員長と)きちんとコミュニケーションをとることにつきる気がします。
そして原案の原案を作るくらいのことをすると,実質的に良い支援体制を作っていくことが可能になるのではないか,と思っています。

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コメント

ご無沙汰してます。神戸のろう教育の集会で講師されるそうですね。今までは、分科会で参加者からレポート提出できたのに、今年は選択コース格下げです。
おっしゃるとおり、大学というところでのものごとの決め方はまどろっこしいと言えば言えます。京大とて、似たようなもの。
で、京大にも「身体障害学生相談室」という組織は1980年からあったのですが、専任職員はやっと、2007年12月から配属されました。なんと27年。この話も神戸でしたいので、ちょっと時間をください。長谷川氏が座長ということですが・・・。
ではまた。

松延さん,コメントをありがとうございます。
全国集会,担当することになりました(「格下げ」かどうかはともかく…)。
私自身は,大学の決め方に,問題がないとは思いませんが,要はそのルールを把握しておくことが重要なのかなと思っています。京大に専任職員が配属になったとのこと,ともかく良かったですね。

今週発売のAERAに、東大が8億円をドブに捨てた云々の記事がありましたが、あの中でも、部局自治の伝統と民主的手続きの重視ということで、委員会等の会議がたくさんあるとありました。それは京大とて同じことでして、たぶん大規模国立大学ではどこでもそうだろう、と思います。煩瑣で時間がかかる、と。そういうもの、と割り切ったほうが精神衛生上よろしいかと思います。
神戸の集会ですが、高等教育は去年までは分科会で二日間ありましたが、今回は半日のみです。どのように進めるのかは座長と打ち合わせることになるでしょうが、参加者からの体験、事例等の発言を多くすくい上げることも必要でしょう。
ではまた。

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