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2007年7月 8日 (日)

入学式までにすべきこと(その2)

入学式までの半月の間で,しなければいけないことが大きく2つありました。
1つは,人材の確保。
そしてもう1つは,予算の確保。
どちらも重要ですし,どちらも早く動いておかなければならないことですが,どちらの方が大事かと言えば,人材の確保でしょう。
なぜなら,予算が確保できなかったとしても,「タダでもいい」という人材が確保できれば,とりあえずの支援体制を構築することはできるからです。
そして実際,当初はそのような募集をしましたし,それでも支援者は集まってくれました。
より正確に言えば,予算要求のための動きも同時並行で進めていましたから,ノートテイクをしてくれるという有志学生には,このように伝えました。
「本来,ノートテイクには謝金が支払わなければならない。だから今,大学に対して謝金の支払いができるよう,働きかけている。しかしその結果がわかるには,まだしばらく待たないといけない。もしかしたら,結果的に謝金が払えないかもしれない。それでもいいという方,ぜひ,協力してほしい」と。

結果的には,その後の教授会で予算が承認されたことで,ノートテイクをしてくれた学生には,4月までさかのぼる形で,謝金が支払われました。
でも,ともかく初年度,入学式の日から,式典やオリエンテーションも含め,すべての授業に情報保障を用意することができたのは,「同じ専攻に入学してくる聴覚障害のある後輩を助けてあげたい!」という先輩学生の熱い思いのおかげでした。
細かいことですが,例えばこんなこともありました。
当時,私は2年生(新3年生)の担任でした。
そこで,自分が担任をしている学生の中で,いざという時にとても頼りになる,とある学生にこのことを電話で相談しました。
「わかりました!じゃ,募集の内容をメールで携帯に送っていただけますか?そしたら,みんなに回します!」
なかなか,良い反応です。心強いです。
そこで,テイカー募集の文面を作成して,彼女に送ってみました。
すると…
「文章堅いんで,私の方で直しちゃっていいですか?」

うーん,ツワモノです。参りました。m(__)m
担任の大学教員の文章の添削を買って出る勇気のある学生,なかなかいないですよね。(^_^;)
もちろん,お願いしました。
「頼もしいね!助かります。よろしく!」みたいな返事をしたような気がします。

「こんな感じで,いいですか?」と,修正されて返ってきたのを見て,お見事!って感じでした。
私が作った文章は,本当に「事務的」でした。
「聴覚障害のある一年生が入学します。そこで,ノートテイクをしてくれる学生を募集しています。」みたいな。
一方,彼女が作った文章は,「聴覚障害の一年生が入って来るみたいだから,私たちみんなで頑張って応援してあげようよ!隣に座って,先生の話を書き取ってあげる人が必要らしいんだよね。」みたいな感じでした。
さすが,学生の気持ちを動かすのは,学生に任せるのが一番ですね。
それにしても,私の文章,まるで,もてない男が出会い系サイトにメールを流しても,誰も返事をくれない…みたいな文章です。
それにひきかえ,彼女が作ったメール,「私も協力するよ!」と思わず返事をしたくなります。
さすがに4年以上も前のことなので,メールの文章そのものはもうありませんけど(残念です…)。

このメールの呼びかけですが,良い教訓になる気がします。
「募集してはいるけど,なかなか人が集まらない」という声を,しばしば聞きます。
全国の大学の,聴覚障害学生支援コーディネーターさんの,共通の悩みだと思います。
群大でも,ときどき,そういう悩みを聞くことがあります。
そしてそのたびに,掲示板などでテイカーの再募集をしてみたり,いろいろ工夫をすることになります。
では,なぜこの時に,一気に学生が集まったのでしょうか。
一言で言えば,「自分たちの後輩を助けてあげよう!」という先輩の気持ちが結集したからだと思うのです。
でももう少し踏み込むと,なぜ,彼らの心に響いたのでしょうか?

以前,公共広告機構のCMで,こんな言葉がありました。

命は、たいせつだ。  命を、たいせつに。 そんなこと、何千何万回言われるより、 「あなたが、大切だ。」 誰かがそう言ってくれたら、 それだけで生きて行ける。

一般論で「ノートテイカーを募集しています」語られても,「ふーん」と思ってしまう。
特に関心がなければ,「ふーん」とすら,思わないかもしれない。
でも,「あなたの協力が必要なのだ。」とか,「私たちで,なんとかしてあげようよ!」と言われると,答えてあげたくなってしまう。
添削して書き直してくれた学生,Wさんの文章には,そんなエッセンスが詰まっていたように思います。
その後,Wさん,教員採用試験も一発で合格して,3年目。
きっと,良い先生になっていることでしょう。

…そんな感じで,学生による学生への呼びかけのおかげで,障害児教育専攻の先輩学生の多くが,積極的に協力してくれる形で,テイカー希望の学生が集まりました。
今思い出しても,メールの添削をしてくれたWさんはじめ,集まってくれた先輩学生の皆さんに感謝,です。
ありがとうございました。m(__)m

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